ヴァルナ国際バレエコンクールの紹介

前回2016年開催時に引き続き2018年 第28回 ヴァルナ国際バレエコンクールの審査員に選出された今村先生に、コンクールに関するさまざまなことについてインタビューさせていただき、海外で活躍するダンサーやバレリーナを目指す子供達に向けてのメッセージをいただきました。

  • 日本では暑い日が続いていましたが、ヴァルナはいかがでしたか。
  • 暑かったです。
    やっぱり世界的に気候が変なのか、雨がよく降ったんですよね。
    7月の時期はあんまり降らないところなんですって。2年前に私が行った時は1回も雨が降らなかったです。
    でも今年は何回も雨が降って、向こうの方も「何かおかしいね」と言っていました。
  • 改めてとなりますが、今回のヴァルナ国際バレエコンクールの印象的なエピソードなどございましたらお願い致します。
  • 印象的なエピソードはさっきの話だけど、とにかく雨。今まで雨のヴァルナのコンクールってあんまりなかったんです。
    ところが第2次予選の2日目に、それまでも雨は降ったり止んだりしていたんですが、その時はずーっと雨だったんですよね。
    開演が夜8時で11時すぎに終わる予定だったんですけど、8時に小雨みたいのが降っていて。それで開催ができないということで「雨が上がるのを待ちます」って言って。雨の中4時間待ちました。だから始まったのが夜中の12時。 その間ずっとテントの中で審査員も傘をさして待っているんです。それで野外のステージだから、もちろん楽屋も野外なんですよ。野外に仮設のテントを審査のために作ってくれていて。そこにテーブルが置いてあって、お茶飲んだりはするんですが、そこでみんな傘をさしてずーっと4時間くらい待っていて。
    そうしたら12時に「これから二次予選を始めます」って二次予選がはじまりました。
    予報を見たら翌日も雨だったので「翌日分も今日やります」って。
  • 夜中からはじまって、まとめて2日分行ったのですね。
  • 夜中の12時からはじまって終わったのが朝方の4時半。2日分やったんです。
    ですからもう寒くて。雨上がりだし。審査員も毛布とか持ってきて、包まりながら審査するし。
    踊る方はもっと大変だと思いますけど。夜中の2次予選だったんですよ。
  • これまでにないくらい過酷なコンクールだったのですね。
  • そうでしょうね。
    踊る人達はとっても大変だったと思うけど、よく頑張って。それを乗り越えて。
  • ダンサーさんは、体力的にも精神的にも相当大変ではないでしょうか。
  • 長い時間待たなきゃいけないし、今日踊るのか踊らないのか、不安な状態で待たなきゃいけないですからね。
    それが今回の最大のビッグニュースでしたね。
  • ヴァルナ国際バレエコンクールは野外ステージですが、床などのコンディションは大丈夫だったのでしょうか。
  • 床はヴァルナ方式っていうのがあって。
    舞台の上に一面ビニールシートをかぶせるんですよ。床が濡れないように。
    それでそこに溜まった水を水捌けするんです。
    そしてシートを剥がすと床は濡れていない状態で。木の床だからね。濡れてない状態を作っていて。
    それでも一部は濡れているんですよ。そうすると濡れているところに油を撒いて、火をつけるんです。それで乾かすんです。
  • え! 火をつけるんですか。床が燃えてしまいそうで、ちょっと怖いですね。
  • そうですよね。
    上手く水に濡れたところだけ、油を撒くんです。木の床だから、そういうことができるんだとは思うんだけど。
    びっくりしましたね。写真も撮ってきたんだけど。
    財団の人たちが和かに冗談で「これはヴァルナの特許だから撮っちゃいけない」なんて言ったりして。
    (写真を見ながら)ここが舞台なんですけど、この緑がビニールシートなんです。
    こんな風に床になっていて、例えば濡れているところをほら。
  • 本当に燃えていますね。けっこう大胆に。
  • そうなんです。そんな感じで、初めて見た光景なんでビックリしたんですけれども。
  • 雨のヴァルナならではの光景なのですね。
  • それでもさっきみたいにビニールの大きなカバーを掛けているから、全面濡れているわけではなくて。
    それを剥がすと、割とそのまま木の床が出てきて、濡れている所だけをああやって乾かしていました。
  • ちなみに今村先生がやられている清里フィールドバレエでは、雨の時はどのようにしてらっしゃるのですか。
  • ヴァルナは木の床だからこういうことができるけど。反対にうちは木ではなくてリノリウムだから、もうずっとそのままなんですよ。
    その後に水捌けはもちろんしますし、後は雑巾掛けして乾かしたり。あとはうちの場合は舞台の下にボイラーがたいてあって床を温めるんです。少しの水は蒸発させるようなかたちにしているんです。野外ならではですよね。
    ヴァルナ方式をうちでも盗んじゃおうかと思ったけど、うちはリノリウムだからできないっていうことで。
    やっぱりそれぞれで、色々なコンクールや舞台でのやり方があるんでしょうね。
  • 深夜12時からはじまったという事ですが、観客の方はいらっしゃったのでしょうか。
  • 私たちは舞台の方を見ているから後ろの方はあまり見られないんですよ。
    もちろん付き添っている先生方や何人かの方は朝方の4時半にちゃんと後ろで見ていましたから。
    何人かの方は寒い中、観てくださったんだと思うし。拍手ももちろんあったから当然観ていてくれたはずですね。
  • 朝方まで、ダンサーさんも、先生方も大変だったのではないでしょうか。
  • そうですね。
    翌日は雨っていう予報だったんですけれども、晴れちゃったの。だから休日になって1日休めたりもしたんだけども。
  • ヴァルナ国際バレエコンクールではバレエをやっていない人も観に来られているのですか。
  • 何かそんな感じもしましたね。それで良い子が出てくるともう拍手して。
    それで一次予選、二次予選とだんだん観ていって、決勝戦になったら自分のご贔屓のダンサーが決まってくると、彼らが出てくるだけでわーって拍手が起こったり、そういうことがあるので、そういう意味では舞台と客席がとても近しい関係にあるという感じがしましたね。
    それで今回の1位になったポルトガルの子がいるんですよ。男の子で。もう彼は大人気で、まだ15歳の子なんだけど。その子がシニアより上の点数をとっているんですよ。一番トップ。本当にもうコンテンポラリーもよく踊ったし、クラシックも清楚で素直な踊りで、とても好感が持てる少年でした。
    だからその子が出てくるともう全員拍手。何しても拍手で大人気。もうファンができちゃったって感じですね。
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